2019年1月~6月までに読んだ本の中で、☆3以上のおすすめ本をご紹介します。
いわゆる話題作はあまり読んでいないので、地味に進めることになりそうな今回。
もともと自分の備忘のために読書メーターに投稿していたものを、一部編集してお届けします。
★★★★★(星5つ)
疫病神シリーズは大量に読んだので差をつけるために1作だけ選びました。
国境(上・下巻)/黒川博行
前作、疫病神よりも更に会話が小気味よくなっている。二宮の桑原あしらいが上達していてうまく操縦。 顔のデッサン狂ってるだの歩くゴミ箱だのめっちゃ罵倒されていて草
相当取材されたのだろう、北朝鮮の経済食糧その他の事情が非常に詳しく書かれている。
この国に生まれてしまうと自由もほとんど無くて食べるのもギリギリなんて…国民に同情する。
桑原が結構な頻度で二宮のピンチを助けているにもかかわらず、二宮がなかなかクズ思考。笑
取っ捕まったやつらは、大抵余計な抵抗をするが、そのせいでさらに殴られたり金目のものを壊されたりする。素直になれよ。。
李のじいさんと柳井を労ってやりたい。黒幕の後ろにさらなる黒幕がいたりと、途中ごたつきながらも爽快なラストだった。
桑原の国家観がシンプルながら頷ける。「…国が国であるための根本はなんや。国境を守ることでも法を守ることでもない。国民の命を守ることやないけ。…」
日本人の勝算/デービッド・アトキンソン
全日本人に読んでもらいたい良書。生産性と最低賃金を上げよ。日本の最低賃金は低すぎるよなぁ。一人暮らしもマトモにできない。書ききれないから2000字超のブログで投稿済み。
詳しくはこちらの記事で紹介しています。

★★★★☆(星4つ)
今回はこちらがボリュームゾーンになります。
みかづき/森絵都
塾という視点から見る日本の戦後(ちょっと戦時)教育の歴史。
千明の強引さと一途さに少々引きながらも、その熱量が伝わってくる。
時代ごとに変わる教育と塾の関係性。タイトルのみかづきは最後まで読むとこのタイトルしかないと納得させられる。
千明の孫である一郎が指導していた子供、直哉とのエピソードに教育の答えを見た気がした。
大河ドラマを見終わった後のような読後感。
螻蛄/黒川博行
宗教の絵巻物。疫病神コンビが東京進出。
見る人が見れば涎を垂らして喜びそうな国宝級の絵巻物だが、二宮にはその価値がわからないため、すり替える際にパンツの中に入れる。ヒドイ。
桑原は何だかんだで度胸のある二宮を気に入っていそう。2度目に捕まったときマジギレして金を桑原にせびる図太さ。
二宮は桑原に対して基本的に敬語だが、「了解、ロビーは危ないもんね」ってタメ口になってて2度見した笑
インコのマキが登場。
破門/黒川博行
映画の出資金を詐欺られた嶋田組。金を取り戻すために奔走するなかで桑原は、同じ川坂系の組員を叩きのめしてしまう。
キャンディーズⅠが潰れていたり、暴対法でヤクザの経済状況の雲行き怪しく、二宮企画の仕事も減っていたり、セツオがヤクザとして生き残っていけないだろうと二宮が案じるシーン。
これまでの痛快な物語に比べると哀愁が漂う今作だった。
直木賞受賞作。
世界一美しい食べ方のマナー/小倉朋子
書店でパラ見したところ、すごい情報量であることと、今後の役に立ちそうということでその場で購入。1か月ほどかけてのんびりとじっくりと読んだ。
「マナーは人をジャッジするものではない」
「美しい食べ方は時代や環境で変化する」
著者が、いかに食を大切にしているか伝わってくる良書だった。買ってよかった。手元に取っておきたい。
オールカラーでイラストがおしゃれカワイイ。
二つの祖国(一~四巻)/山崎豊子
(1)太平洋戦争の時代・主人公は日系二世の天羽賢治。一世の悲哀が丹念に描かれる。
アメリカで生まれ、市民権も持つ二世までも収容所に入れられ、「ジャップ」と罵られる。収容された馬小屋での生活はショッキングであった。
そして合衆国側から忠誠テストが。自らの信念と家族の間で揺れ動く賢治の様子が描かれる。
(2)戦争の描写が続く。アメリカと日本に分かれて戦う兄弟が戦地で再会する皮肉な運命。
一人ひとりの人生があることを失って国家という見えない敵と戦うことの虚しさや悲惨さを感じた今巻だった。
両親と日本に渡ったナギコは広島で被爆する。被爆者の描写が悲惨すぎてしんどい。
(3)東京裁判の様子が描かれる。賢治はモニターとしてその裁判に参加する。
戦勝国が敗戦国を裁く一方的な展開に賢治は自らの役割に悩み始める。
退廷を命じられたスミス弁護人に対し、裁判長に謝ってでも戻るべきだという日本人と、悪いこともしていないのに謝るべきではないと譲らないスミスに、全体主義の日本人と個人主義のアメリカ人の違いを見る。
(4)賢治の人生。それが二世の歩んできた道そのものだったのだと思うと、こんな人生があっていいものかと嘆きたくなる。
主人公だけでなくこの作品全体に言えることだが、不条理が多すぎる…。だがそれを受け入れなければならなかった人もいた先に、今の平和があるということを心に刻んだ。
東京裁判。先の(国境)桑原の言葉よろしく、国家のために国民がいるのではない。国家は国民の命を守るためにあるのだということを、よく理解しなくてはならない。
戦犯で処刑された人たちが際立って悪人だったというわけではない。環境や使命感からそのような行動を取ったのだ。そして誰もがその立場に立ったとき、使命感から間違えてしまう可能性があるのだと強く感じた。
少し、東条英機が最後に家族に語った言葉を概略で書きます。
「…捕虜虐待の罪が一部の不心得により生じたが日本国民全般の思想感情でないことを世界に知って貰いたい。日本精神は(この戦争により)一朝に喪失するものでなく、将来の栄光を信じる。罪は我々指導者にあり、戦死戦病者と家族に救済措置を願いたい。…手枷、足枷をされても精神を縛ることはできない。どんな逆境に立っても大きな力を湧き出させるため正しい信仰を持つこと。」
彼のことを正しく知っている日本人はどのくらいいるのだろうか。
私もこの本で出会っただけだが、歴史の勉強とは全く違う印象を受けた。
そこには一人の人間としての人生があり、悪魔などおらず、正義も悪もないのだ。
長くなりました。
さるのこしかけ/さくらももこ
★★★☆☆(星3つ)
星の付け方はざっくりです。
疫病神/黒川博行
登場人物と組織が多すぎて混乱。最初100ページは続々と人が出てくるので、メモを取りながら読むべきだった。。。
ヤクザの桑原に怯まない二宮、この二人の掛け合いが最高。
産廃処理場。人の欲は底がない沼。溺れずに渡りきった二宮。良い落としどころで締められる。
暗礁(上・下巻)/黒川博行
ずっと麻雀の話だったらお手上げだなと思っていたけど、最初だけだったので安心。
桑原に唆(そそのか)されて賭け麻雀をしたことをきっかけに警察からもヤクザからも追われることになる二宮。
前作国境で登場した刑事の中川が活躍。運送会社、警察、ヤクザ。
花鍛冶組の連中と青木を追って沖縄へ。桑原さんゴロまきまくり(ケンカしまくり)。
そして理不尽な暴力に晒される二宮。
沖縄で奈良東西の放火事件真相の決定的な証拠を掴んだ桑原は強請にかかるも、すべてが上手くいくはずもなく…。
この2人はこんな無茶苦茶やってよく生きてるな。(ふつうなら死んでる)
しかし楽しいこのコンビのやりとりにクスリとさせられて、また会いたくなってしまう。不思議!
どちらかが彼女を殺した/東野圭吾
読書後一番の感想が「どういうことや工藤…」久しぶりに加賀さんシリーズ。
やっぱり読みやすくさらっと読みきってしまった。
たった一人の家族である妹を殺害された康正は犯人を自ら探すことに。康正の視点から描かれる。容疑者がゲスすぎて何というか、疲れる。
私が彼を殺した/東野圭吾
読み終わった直後「どういうことや工藤…」となった(また)ネットの解説を読んですっきり。
穂高へのヘイトを余すところなくしっかり集めて殺される瞬間。本当に上手い作家さんだ。読者からも「こいつクズやん」と思わせてからのSA・TSU・GA・I
容疑は花嫁の兄、穂高に使い走りにされている男、編集者の女。それぞれの視点から展開。
雪笹が「私が殺してやった」とする根拠はちょっとわからない。
一番かわいそうなのが自殺しちゃった元カノ。彼女が持っていた毒物・カプセルの数・ピルケース。
嘘をもう一つだけ/東野圭吾
加賀シリーズ唯一の短編集。
これまでのシリーズの最後50ページの部分だけといった内容。
狂気的なやつもあってひいぃ、、となりつつも3日で読破。加賀シリーズ完読!
喧嘩/黒川博行
「喧嘩」と書いて「すてごろ」…シリーズファンとしてはこのタイトルだけで釣られる。
二宮のもとにヤクザとのいざこざを解決してほしいとの依頼が舞い込む。
二宮は桑原を頼ることに。破門された桑原だが二蝶会の協力も得て金の回収に臨む。
ゲス議員やその秘書を締め上げるが色々と酷い!(議員たちも疫病神コンビも)
マキ生きてたかわいい。遠征はなし。ちょっとだけ東京。
本日は、お日柄もよく/原田マハ
主人公が社会人5-6年目とは思えないほど幼稚で、同僚との会話もまるで女子高生みたいで和田とのやりとりも子供っぽくて読んでいて疲れるw
だが最後まで読み切ったのは、
「愛せよ。人生において、よきものはそれだけである。」
「聞くことは、話すことよりもエネルギーがいる。だけどその分話すための勇気を得られる」
「困難に向かい合ったとき…3時間後の君涙が止まっている。24時間後涙は乾いている。2日後顔を上げている。3日後歩き出している」
など、時々はっとする言葉があるからこそ。最後まで読んで、一番よかったのが冒頭の久美さんのスピーチだな~。
その後の選挙スピーチは、民主党の政権交代をモデルにしたのだろうけど、その後の末路を知っているだけに全く熱くなれなかった。
選挙の部分が始まって主人公が急に賢くなって、作者の考えの代弁者っぽくなっていき、恋愛パートでバカっぽく戻ったり、なんだかな~というモヤモヤが残る。
まとめ
シリーズものを読み始めると偏ってしまいますね。
個人的にはたくさん読めて満足です。
星5以外でも語りたくなるような本にたくさん出会えたな、というのがこの上半期の感想です。
次回はまた来年!
前回・2018年記事

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