2019年下半期に読んだおすすめ本をご紹介part1

2019年7月~12月までに読んだ本の中で、☆3以上のおすすめ本をご紹介します。

今期は比較的多く読んだので、2回に分けていきます。今日は第一回目。

☆5~4です。

もともと自分の備忘のために読書メーターに投稿していたものを、一部編集してお届けします。

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★★★★★(星5つ)

読んだ順序で書いていきますので、同じ★の中で序列はありません。

基準は、「もう一度読みたい」と思える作品を星5としています。

戦場のコックたち/深緑野分

タイトルでなんとなく調理だけをしている兵士を想像して読んでみると、前線で戦いながら炊事もこなす、まさに「戦場のコックたち」の物語だった。

そのなかで起こる事件をティムは親友のエドとともに解決を試みる。エドはその明晰な頭脳でコナンくんさながらの推理を披露する。

第二次世界大戦時のヨーロッパの状況がとても詳しく描かれている。ミステリーでヒューマンドラマで、歴史小説感もあり、かなり骨太で読ませる内容だった。

共に戦ってきた友人との別れは何度読んでも胸に迫るものがあるし、心も相当疲弊するだろう。最後は切なくほろりとさせられる。

滔々と紅/志坂圭

飢餓の村から身売りされてきた駒乃(こまの)が吉原で花魁まで上り詰める下剋上ストーリー…かと思いきや、花魁になっても地獄。残酷な描写も多い。

花魁につく弟子たちの衣食住は花魁持ち、借金漬けにして逃げられないようにする、行く先は病死、足抜け(脱走のこと)をしてもどこまでも追ってくる。

風俗史として読んでも面白いし、人間ドラマとしても目が離せない展開の連続で一気読み。

花魁となった艷粧(たおやぎ)の意気張りもナイス。禿(かむろ)のなつめが愛おしい。

あずかりやさん/大山淳子

全盲のあずかりやさん。一日百円でどんな物もあずかる。

そのあずかりやさんをまわりのモノたちの視点から描く物語。最初からのれん目線の話だったので面食らった。

人じゃないから、純粋な目線で物事を見ている。そして皆店主のことが大好き。

まわりのモノを大事にしようとちょっと反省しました。

店主はイケメンなので松坂桃李くんをイメージしながら読んだ。個人的にとっても好きで星5。

蜜蜂と遠雷(上・下巻)/恩田陸

ピアノコンクールと四人のコンテスタントの話。

クラシックに詳しければもっと読み応えあるんだろうなあ。

次の演奏が「聴きたく」てどんどん読んでしまった。アヤの音楽を見つける最後は胸が熱くなる。そして明石に訪れる思いがけないラスト。

恩田さんの小説は夜のピクニック以来。自分にしては珍しく何度も読んだ本だが今作もその内の一冊に加わりそう。彼女の豊かな情景描写、心象描写がストライクなのかもしれない。

文庫本の解説も素晴らしいので、ぜひ最後まで読んでいただきたい。

★★★★☆(星4つ)

最後まで読んで、面白かった・好きだと思えるものを星4としています。

ぼくのメジャースプーン/辻村深月

学校で飼っていたウサギが惨殺され、友達のふみちゃんが心を閉ざす。犯人に復讐することを決意した主人公。声を使った能力で犯人と対峙する。
操作系の念能力者か…どこまでがルールの範疇なのか、ハンタ(HUNTER×HUNTER)さながらに切り分けが難しい能力。
この本の中では復讐のあり方について多く語られていて、満足のいく復讐なんてないのかもしれないと考えさせられる。
主人公のぼくが最後に出した答えにドキッとさせられたし、その決意に涙が出そうになる。そしてふみちゃんがいじらしい。

空飛ぶ広報室/有川浩

不慮の事故でP免となった空井が配属された広報室での話。
自衛隊に対して無理解であったリカを通して自衛隊について、その広報について知ることができる。軽い文章ですんなり読むことができた。
空井があまりにウジウジしてるから途中ちょっとイラッとする。
最後に付け足されたという松島基地のエピソードがよかった。
自衛隊の人はヘラヘラしてないから好きです。

知られざる皇室外交/西川恵

推しが尊いとかじゃない、本当の尊い存在。天皇を天皇たらしめるのは肩書きではなく、その精神だと感じた。

戦時中、日本と敵対していた国はもちろん、第三国にも日本をよく思っていない人は大勢いた。

彼らにも真摯に向き合うことで日本に対してのイメージが変わった人が大勢いたという。

皇室は相手によって対応を変えない。欧州との戦後の付き合いや上皇夫妻による慰霊の旅について詳細に書かれている。

元号が変わったタイミングで読めたことに感謝。

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常/二宮敦人

東京芸大の美校と音校のインタビュー式レポ。
よく「ツブシが効かない」と言われる芸大だが、彼らは使命感を持って芸大に通っている。そこにツブシがどうのというのは野暮だと思う。すでに彼らはライフワークを持っているのだから、自分なんて探さなくていいのだ。
寝食を忘れるくらいに打ち込めることがあるというのは羨ましいし、素晴らしい。見つけられない人もたくさんいるのだから。…いいなぁ。
ある意味、就職してる時点で落伍者」という一文は日芸出身の私にグサグサ刺さる…苦笑。

ツバキ文具店/小川糸

代書屋のポッポちゃんが様々な依頼を受けながら、先代との思い出と、分かりあえずに終わってしまった最期に整理をつけていく物語。

登場する文具がステキで、私もガラスペンが欲しくなった。

紙と筆記具の相性など読んで楽しいトリビアも。

ポッポちゃんのお友達が年配のバーバラ婦人と5歳のQPちゃんというのが、いいなぁ。年齢に関係なく、別け隔てなく接することができて、対等でいることができるのが。

人魚の眠る家/東野圭吾

読んでいると脳死と臓器移植に詳しくなる。

そして、自分が彼らの立場になったならどうするだろうかと何度も考えた。

薫子の行動もある程度わかるし、それを気味悪がる人の気持ちもわかる。

死って何なのだろうか。心に深く刺さる作品だった。 

「この世には狂ってでも守らなければならないものがある」

空に牡丹/大島真寿美

花火に魅せられた静助さんの話。丹賀宇多村の地主の次男として生まれた静助は、焔硝蔵(えんしょうぐら)のある家に住む杢さんと出会う。

花火を知った静助は、花火作りにのめりこむ。

人生は花火。この世の無常や人の一生の儚さが、「ご一新」(今で言う明治維新)や家族の生死を通して描かれている。

昔ながらの赤くて暗い和火という花火も現代の私から見ると風流に感じられて好き。しみじみと感じられる良書だった。

海の見える理髪店/荻原浩

短編集。小学生の冒険「空は今日もスカイ」過去の悲しみと決別する「成人式」が好き。

表題「海の見える理髪店」…理髪店の店主の自分語り。語りかけている相手が見えてくる物語のグラデーションが見事。

「空は今日もスカイ」…母に連れられ田舎へ越してくる茜。家出をして海を目指す。道中出会った少年の背景を考えてしまって切ない。【生活なんか嫌いだ。茜はライフがしたい。】 

「成人式」…事故死した娘の成人式に両親が参加する。参加すると決めた時から明かりが灯り、止まっていた時計の針が動き出すような感覚をおぼえる。

この手の作品は久しぶりに読んだ。やはり味わい深くて良い。

 

次回に続きますので、ご覧いただけますと幸いです。

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