【書評】日本人の勝算 全日本人に読んでもらいたい良書

普段は備忘のために読書メーターで3行感想文みたいのを投稿しているのですが、

今回書評を書く「日本人の勝算」は、3行では収まらないくらいに思うこと・考えることがありました。

全日本人に読んでもらいたい名著だと思います。非常に勉強になりました!

 

「書評」とかかっこつけていますけど、読書感想文なので気楽にご覧ください。

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日本人の勝算 概要

「日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義」

2019年1月に東洋経済新報社から発行されました。

著者はデービッド・アトキンソン氏。日本在住30年の方です。

徹底したデータに基づく分析と提案

こういった書籍では、個人的な意見でものを言っている本も多いのですが、この本は徹底的に海外の論文を読み込み、過去データの分析結果をもとに、少子高齢社会の日本に向けた提言がなされています。

日本人の勝算 内容

↑付せんをベタベタと貼りながら読み進めました。

 

実際の内容は読んでいただきたいのですが、ざっくりと内容と個人の感想を書いていきます。

人材評価は高いのに、生産性が低い日本

日本は生産性が低い国です。生産性を上げないことには日本の復活はありえない。

このままでは日本は三流先進国になると警鐘を鳴らしています。

 

少子高齢化で人口が減っているにもかかわらず今のままの働き方・働かせ方をしているとヤバい、というのです。

一方で日本人の人材評価は世界第4位生産性は28位と先進国最低です。

昔の仕事のやり方にいつまでもとらわれて、潜在能力が十分に発揮できていない状況です。

 

最低賃金を上げるべき

著者は最低賃金をもっと上げるべきだと提言しています。

最低賃金と生産性には強い相関関係があることが確認されています。

 

また、最低賃金で生活する層は、最低賃金を引き上げることで消費が増えることが確認されています。

一方、富裕層では消費が増えることは無かったそうです。

お金持ちの人はもともとお金を持っていて、欲しいものは手に入れていますから、最低賃金が上がったところでその消費動向は変わらないというのは、なんとなくわかりますよね。

 

消費税を上げる前に最低賃金を上げて消費を促すべきです。

賃金が少ないうちは消費も増えない。

最低賃金を上げることで増える消費のそれは、増税される消費税2%分の税収どころではないと、主張しています。

賃金について・私が思うこと

2019年現在の東京都の最低賃金は時給1013円。

最低賃金でフルタイムで働いたとしたら、月給はおよそ16.5~18万円です。

そこから税金・年金・保険料が引かれると、手取りは13万円台~14万円台前半となります。

これではマトモに一人暮らしすらできません。

 

私がその昔、派遣社員として働いていたころ、時給1600円でした。

総支給は24万円前後ですが、年金などが高いので、手取りは20万円程度。

都内一人暮らしでギリギリの額です。

家賃と光熱費、通信費などの固定費のほかに、食費や日用品などの最低限の生活費を除くと、贅沢できるお金はごくわずかです。

派遣はボーナスもないので貯金もほとんど出来ません。

コンビニスイーツなんかも当時の私にとっては贅沢品でした。

 

時給1013円は高校生のアルバイトなら上等ですが、それで「普通の生活」をするのは厳しすぎます。

また、生活保護と大きく変わらないというのは勤労意欲を削ぐ原因にもなります。

企業の規模を大きくすべき

日本は異常なぐらい、中小企業の数が多いです。

そしてその中小企業の多くが人手不足で悩んでいます。

 

慢性的な人手不足のため、担当者が一人しかおらず、ジョブシェアリングが全くできていません。

担当者が辞めてしまったり産休・育休に入ってしまえば大ピンチです。

産休育休が取りづらい会社、つまりは女性が働きにくい環境なのです。

日本の女性活用が進まない一因に、中小企業の多さが上げられています。

 

そして、中小企業は大企業と比べて賃金および生産性が低いです。

一方で素晴らしい技術を持つ中小企業もあることを認め、守るべき技術があるなら、大企業と合併すべきだと筆者は主張しています。

大企業のほうに合わせて労働者の賃金も上昇します。困るのは社長だけ、とも…。

本当に人材不足なのか?

日本はこれからどんどん人口が減っていきますから、絶対的に需要は減っていきます。

でも供給量はそのままなので、どんどん供給過多になっていきます。

供給過多になると次に起こるのは、企業間の値下げ競争です。

値下げした皺寄せはどこにいくかというと、人件費です。

 

人が不足しているわけではなく、現在の供給過多な会社の数に合わせると「人手が不足している」のです。

生産性を上げることを放棄し、値下げ競争で会社を維持させることは、不健全です。

 

「人手不足って言ってるけど、本当に不足しているのは最低賃金で使い倒せる奴隷」

とホリエモンが言っていましたが、その通りだと思います。

ZOZOが時給1300円でパートを募集したところ、定員を大きく上回る応募があったのは記憶に新しいところです。

金を出せば人は集まるということが実証された形です。

大人への教育を施すべき

高校や大学を出てから、通学して勉強している人はどのくらいいるでしょうか。

現在60歳だとすると、約40年、古い知識のまま生きているのです。

40年もあれば色々なことが変わっています。

そこで大人の学びなおし、いま持っている知識をアップデートをする必要があると筆者は述べています。

任意とすると、高学歴の人は参加しますが、そうでない人は参加しないというデータがあるそうです。

ですから、大人の学びなおしを義務化すべきなのです。

 

少子化で大学も少ないパイの取り合いとなっています。

国民のわずか18%しかいない子供を取り合っていては淘汰は避けられないでしょう。

ならば、大人への教育をする機関へシフトしてもいいのではないでしょうか。

まとめ

私が普段この国に対して思っているモヤモヤしたものをすっきり言語化してくれて、さらにデータに裏打ちされた提言までなされている、非常に読み応えのある本でした。

 

私は日本で生まれて日本で育っています。

物心がつく頃には平成不況真っ只中で、暗い顔した大人たちが溢れていました。

そんな中で生きてきましたから、どこかこの国に対して諦めみたいなものを感じていたのです。

その一方で、街並みは綺麗で世界に誇れる文化がたくさんある。

やっぱり諦めずに、なんとかしたいです。

 

高度経済成長期とは違うやり方で、日本人の強かさを示していく時ではないかな、と強く思いました。

 

グサグサと刺さる内容もありました。

本当におすすめできる本で、全日本人に読んでいただきたいです。

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