
会社が変形労働時間制を導入して、4月から残業代が出なくなりました。手取り給料が減ってしまって生活が厳しい…。
変形労働時間制だからって、残業させ放題なんてアリなの?

雇用契約書見てみましょうか。
まずは制度概要から確認しましょう。
変形労働時間制=残業無制限 ではない!
労働基準法で、法定労働時間は
1日8時間以内
1週間40時間以内
と決められています。この時間を超える仕事をしている場合は、時間外割増手当を払いましょうね、という法律です。
これが原則ですが、中には業務の繁閑があり、7時間で終わる日もあれば、9時間かかる日もあるという業種もあります。
週末は忙しい飲食店や美容室。
または、月末月初が忙しい経理や給与計算の仕事など、色々ありますね。
そこで、1ヶ月ないしは一定の期間を平均して労働時間が法定労働時間内に収まれば、割増賃金は支払わなくて良いこととする。これが変形労働時間制です。
変形労働時間制の賃金
月給制で固定給となっている方が多いかと思います。
導入されているかどうかは、就業規則を見てみましょう。
または雇用契約書を確認する方法もあります。
変形労働時間制だからと言って、労働した時間分の賃金がすべて月給の中に収まるかというと、そうではありません。
あらかじめ定めた労働時間を超えた場合や、法定労働時間を超える場合は、その分の賃金が必要となります。
次の例で、残業代が発生するパターンを見てみましょう。1ヶ月単位の変形労働時間制の場合です。
青い部分が所定労働時間となり、この部分はたとえ8時間を超えても、割増賃金にはなりません。
一方、3週目の黄色の部分は、「本来7時間労働の日に1時間残業となってしまった」というパターンです。この部分は所定労働時間外ということになり、その分の賃金を支払わなければなりません。
そして赤の部分は、所定労働時間を超えた労働で、かつ、法定の8時間の部分を超えているので、通常の賃金×1.25をした割増賃金を支払わなければなりません。
「法定労働時間」は月の日数によって異なります。
28日 | 29日 | 30日 | 31日 |
160.0時間 | 165.7時間 | 171.4時間 | 177.1時間 |
赤色や黄色の部分が支払われていないときは、未払い賃金がある可能性が高いです。
残業代は含まれているのか問題
変形労働時間制を導入している場合の雇用契約書の例を一部抜粋して見てみましょう。
雇用契約書
:
労働時間 | 10時~22時の間で勤務表により定める(1ヶ月単位の変形労働時間制とする) |
休憩時間 | 1時間 |
給与 | 月給 20万円 |

うちは1ヶ月単位の変形労働時間制。
1週間平均40時間以内なら残業代は支払われないってこと?

この契約書の中の「勤務表」が所定労働時間に当たる部分ですね。
☑ポイント1
所定労働時間を超えた部分についてはその分の賃金が発生する。(割増をしない通常の賃金)
☑ポイント2
所定労働時間を超え、かつ、法定労働時間を超える場合は割増賃金が発生する。
所定労働時間と法定労働時間の違いがよく分からないという方はこちらも参考にしてください!

固定残業代が基本給に含まれている?

ポイントを踏まえて、会社に賃金を払うように言ったら、
固定残業代が基本給に含まれていると言われました。

何時間分でいくらが固定残業代なのか調べる必要がありそうですね。
雇用契約書
:
労働時間 | 10時~22時の間で勤務表により定める(1ヶ月単位の変形労働時間制とする) |
休憩時間 | 1時間 |
給与 | 月給 20万円 ←この部分 |
※ 本来は、固定残業代はこのうち○万円、○時間分と記載しなければなりません!
会社に確認してみましょう。もし明確な答えが得られない場合は、残業代未払いになっているパターンが多いです。
固定残業代・ちょっと言いたい
今、東京都の最低賃金は時給985円。
最低時給で8時間×5日 のフルタイムで勤務したとすると、1月あたり173.3時間の労働時間となります。
985円×173.3≒170,701円
月給20万円だとすると、固定残業代は3万円もないくらいです。(29,299円)
法定時間外労働の時給単価は985円×1.25≒1232円
29,299円÷1,232円≒23時間
1週間あたり5時間強、1日ですと1時間程度の残業が限界です。
にも関わらず、それ以上の時間を、何も言わずに働いている人が多い。最低賃金以下です。
会社任せにしていては、搾取されるだけです。正しい知識を身に着けて、対等な立場で交渉し、時には脱出を図ることも必要です。
まとめ
・変形労働時間制を導入しているからと言って、残業代が無くなるわけではない
・所定労働時間がどのように定められているのか、雇用契約書や就業規則で確認しましょう
・固定残業代が基本給に含まれている場合は、何時間分でそれはいくらなのか、把握しましょう
ちょっとブラックボックスのようになっている変形労働時間制。
制度をしっかり把握することは、ひいては自分を守ることに繋がります。
ムチャな働き方をさせる会社にはっきりNOを言える、そんな社会になることを願っています。
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