東野圭吾氏の加賀恭一郎シリーズを全読破したので、感想レビューと、ざっくりとしたあらすじをまとめます。
実は、東野圭吾氏の作品を読み始めたのはおよそ3年前から。これまで名前は聞いていたけれど読む機会がなかった作家さんでした。
初めて読んだのが「夢幻花」。登場人物の会話のやりとりが洗練されていて、複線の回収も早く、非常に読みやすい作家さんだと思いました。
読書に馴染みが薄い方でも楽しんでいただけると思います。
加賀恭一郎シリーズとは
作家・東野圭吾によるフィクションミステリー小説。
刑事の加賀恭一郎が事件の解決に挑みます。
ドラマ化・映画化もされており、加賀役は阿部寛さんです。
小説の中の加賀は、彫りが深い顔立ちで長身、剣道の達人でもあります。刑事なのにどこか物腰が柔らかく、笑うと白い歯が見えます。しかし眼光が鋭く、嘘を見逃さないような雰囲気があります。
阿部さんピッタリですね!
シリーズ全作品をあらすじとともに紹介
現在出ている作品で10作品があります。最新の「祈りの幕が下りるとき」が加賀シリーズ最後と言われています。個人的にはもっと読みたいのですが。
では、シリーズの全作品を順番にご紹介します。
卒業
あらすじ
大学生7人組。それぞれが進路や恋愛に悩みながらも生活を送っていた。
ある日、そのうちの女性一人が自室で死んでいた。自殺かと思われたが、他殺を疑う彼女の友達は事件のことを詳細に調べ始める。そして第二の事件が起こる。
加賀恭一郎が大学生の頃の物語。
感想
この「卒業」は加賀が大学生の頃の話で、唯一刑事として登場していない巻です。
若々しくも、一本芯が通った彼の姿は頼もしくも、まだまだ若いね。と思わせるエピソードも。
衝撃だったのが、約30年続いているこのシリーズの最初がまさかの加賀のプロポーズから始まるというところ。
途中、お座敷遊びをしているシーンがあり、事件に密接に関わってくるのですが、私は何が何やら正直わかりませんでした…。
眠りの森
あらすじ
バレエ団で起こった殺人事件は本当に正当防衛だったのか。刑事の加賀はこの事件には秘密が隠されていると、真相究明に乗り出す。
その捜査の最中に、あるバレリーナに心惹かれていく。
感想
前回大学生だった加賀は、卒業したら教師になると言っていました。しかし、このシリーズ第2作では、すでに刑事に転職しています。
加賀の大学生の頃からの鋭い嗅覚は健在です。そしてこのシリーズの中でほとんど唯一、恋愛要素がきっちり描かれています。
立て続けに殺人や殺人未遂が起こるのですが、ひとつ放置されたまま終わった事件があり、もやもやっとしました。
悪意
あらすじ
人気作家が殺害された。発見したのは妻と昔からの友人だった。
逮捕された犯人が話した殺害動機とは一体何なのか。
感想
犯人が早い段階で逮捕されます。見どころはその動機で、私も加賀刑事と同様、「騙された!」となりました。
このシリーズで唯一、加賀の一人称で進められる章があります。
そして、一作目と二作目の間の加賀が教師を辞めた理由が描かれています。胸が痛いエピソードです…。
加賀の「過去の章」でもある一作です。
どちらかが彼女を殺した
あらすじ
唯一の肉親である妹を殺された兄は、自身が警察官であるその腕を生かして自らの手で犯人を捕まえることを決意する。
見つけ出した容疑者は二人。どちらが妹を殺したのか?
感想
読み終わった直後「どういうことや工藤…」となりました。
なんと最後までどっちが妹を殺したのか描かれていません。完全傍観者で読んでいたので、この結末には驚きました。
読者はどのくらい推理をしながら、気を付けながら読んでいるのか?と挑戦状を叩き付けるような作品。
もうとにかく「どっちが犯人でもクズだな!」としか考えていませんでしたw反省します。
私が彼を殺した
あらすじ
作家の男・穂高と女流詩人・美和子の結婚式前日、穂高の元彼女が自宅に現れる。彼女は服毒自殺をし、穂高も結婚式の日に殺害される。
美和子の兄、穂高に使い走りにされている男、編集者の女、3者の目線から展開される。
感想
読み終わった直後「どういうことや工藤…」となりました。(また)
「どちらかが彼女を殺した」と同じ構成であることは確認していたのですが、やっぱり読んでもわからない。
加賀刑事が目を付けたのは、服毒自殺をした彼女が持っていたカプセルの数。
穂高の人間性がクズすぎて、読者からも全面ヘイトを集めてからの殺害に、東野氏の巧さを感じました。
もう加賀刑事が探偵の域に達していますw
嘘をもうひとつだけ
あらすじ
バレエ団の事務員が自宅のマンションから転落。事件は自殺として処理されようとしていた。
しかし、同じマンションに住む元バレリーナの元に加賀がやってくる。
感想
シリーズ唯一の短編集です。これまでのシリーズの最後50ページのみを読んでいるような感覚です。それだけに、殺害動機が「ん?」と思うようなところも。
最後に収録されている「友の助言」がいいですね。加賀が刑事としてではなく、いち友人として登場するところが良いです。
赤い指
あらすじ
帰宅すると、庭に女児の遺体があった。息子が殺人を犯したと知って警察に連絡をしようとするが、妻がそれを許さない。
遺体を公園に遺棄し、家族ぐるみで隠ぺいをするようになるが、加賀刑事が追い詰めていく。
感想
テーマは「家族」です。愚かな一家と、そして加賀の家族にもひとつの区切りが訪れます。
息子を守るために、と親が奮闘している間、殺人を犯した息子は知らんぷり。読んでいてイライラします。そしてページを繰る手が止まらないです。文庫本で300ページほどですが、1日で読み切りました。
事件解決は意外な人物から解けていきます。
新参者
あらすじ
日本橋の片隅で、一人の女性が絞殺された。日本橋署に着任したばかりの刑事・加賀は町の人たちから話を聞き、真相に近づいていく。
感想
ここから、練馬に勤めていた加賀が異動し、日本橋での話となります。
人形町周辺がディープに描かれており、昔この周辺に勤めていた私は「これはこの辺だな」「あそこがモデルかな?」と想像しながら読みました。
ひとつひとつの章が短編のようになっており、それぞれ人情エピソードがありました。思わずうるっと来る場面も。
そしてバラバラに思われた章がひとつの事件の解決に向かっていく様は見事です。
麒麟の翼
あらすじ
日本橋でサラリーマンが殺害される。容疑者は事件直後に交通事故に遭い、昏睡状態。
事件解決の糸口が見つからない中、加賀は殺害されたサラリーマンの息子の過去に起こった事件にたどり着く。
感想
水天宮は安産祈願として有名ですが、それ以外にも利益があるということを初めて知りました。そしてそれが事件解決に大きく関わってきます。
お父さんの愛情と献身に思わず涙。
「私たち、お父さんのこと何も知らない」娘のこの言葉にドキッとしたのは私だけではないと思います。
次の日、映画も見ました。映画も泣けます。最後の演出は反則やー。
映画はプライムビデオで無料で観られます。
祈りの幕が下りるとき
あらすじ
幼馴染を訪ねて上京した女性が殺害された。同じころ、ホームレスの焼死体が発見される。
無関係と思われた2つの事件が一つに繋がり、そして加賀の過去にも深く繋がっていく。
感想
個人的には、これがシリーズ最高傑作だと思っています。(思わず太字)まずタイトルが素晴らしいですよね。
これまで、第三者的な立ち位置であることも多かった加賀ですが、この作品では加賀の人生そのものに関わってくる事件が起こります。加賀の感情が揺れ動く様子も描写されています。
関係ないと思われた二つの事件が一つの糸に手繰り寄せられていく様は圧巻です。
最後の90ページ、親子の壮絶な過去と悲しすぎる結末に涙が止まりません。自分ではどうすることもできない運命に翻弄される姿は「砂の器」を思い出しました。
読む順番は?
基本的にはどこから読んでも支障の無いように作られています。
最初から読んでいきたいという方は、「卒業」から刊行順(あらすじ・感想の項の順番です)に読まれるといいでしょう。
ちなみに私は、新参者から読み始めたのでバラバラです。
おすすめ
個人的おすすめ
私は人間ドラマが好きなので、「新参者」「祈りの幕が下りるとき」がドラマ性があって好きです。推理小説はあまり…という方でも読みやすいかと思います。
ホワイダニノットの「悪意」も印象的でした。
推理小説を推理しながら読みたい方へ
「どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」の2冊は、最後まで謎が明かされておらず、好きな方はメモを取りながら謎解きしていくと読みごたえがあるかと思います。
文庫本の巻末に推理の手引きが載っているので、答え合わせをすると良いでしょう。
私は手引きを読んでもチンプンカンプンでしたw
最後に
ほんの数年前に東野作品デビューをした私ですが、とても読みやすい作家さんだと思いました。
読書慣れしていない人でも読みやすいと思います。
一部では「女性の描き方がひどい」という感想もあるようですが、このシリーズは主人公が男性ということもあるためか、私は気になりませんでした。
最新の「祈りの幕が下りるとき」で終章のようですが、加賀さんのスピンオフでも書いてくれないかな~と思っています。
シリーズものって読み続けていると、登場人物に愛着が沸いちゃうんですよね。
ではっ
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